
先に結論
- 水道水をただ沸かすだけでは、PFOS・PFOAはほとんど減りません。
- 家庭用の活性炭フィルターは、条件によっては高い除去効果が確認されています。
- 日本国内の実証試験でも、家庭用浄水器で大きな効果が確認された例があります。
- ただし、どの方法にも「これさえすれば絶対に安心」と言えるものはありません。
1. 煮沸ではPFASを十分に減らせる?
米国環境保護庁(EPA)は、「水を沸騰させてPFASを取り除くことはできますか?」という問いに対し、「いいえ。加熱や沸騰では取り除けません」とはっきり答えています。
実験室で行われた研究でも、これは裏付けられています。PFOA・PFOSなど、日本の基準で規制されている主なPFASを沸騰させたところ、減少したのはわずか11〜14%でした。統計的には意味のある変化ですが、対策として頼れる量ではありません。

なぜ煮沸ではあまり減らないのでしょうか。研究者らは、物質ごとの「蒸発のしやすさ」の違いで説明しています。PFOS・PFOAの仲間は蒸気になりにくい性質を持っているため、沸騰させてもほとんどが水の中に残ります。
PFASにはこのほかにも多くの種類があり、蒸発しやすいものも報告されていますが、それらは日本の現行基準の対象ではありません。この記事では、日本の基準で規制されているPFOS・PFOAを中心に説明します。
2. 浄水器ではどう?
活性炭(多孔質の炭素素材で、無数の小さな穴の表面に物質を吸着させる浄水材料です)は、沸騰とは違う仕組みでPFASを取り除こうとします。物質を蒸発させるのではなく、フィルターの表面に「くっつけて」水から分離するイメージです。
家庭で広く使われている活性炭ポット型の浄水器を使った実験では、この仕組みによって、10種類のPFAS関連物質が81〜96%減少しました。沸騰よりもはるかに高い結果です。
ただし、これは1つの製品を使った実験室での結果です。実際の水道水ではなく、PFASの濃度を調整した実験用の水が使われています。フィルターの種類や使用条件によって、結果は変わる可能性があります。つまり「活性炭フィルターなら誰でも同じだけ減らせる」と単純に言い切ることはできません。
3. 日本ではどんな確認がされている?
岐阜県各務原市では、実際の地下水を使って、家庭用浄水器の効果を確認する試験が行われました。ある家庭用の活性炭浄水器では、PFOSが130 ng/Lから2 ng/L未満へ、PFOAが34 ng/Lから2 ng/L未満へと、大きく減少しました。
一方、同じ試験の中で、別の方式(イオン交換樹脂)の設備では、ほとんど効果が見られませんでした。同じ「浄水器」という言葉でも、中の仕組みによって結果が大きく異なることがわかります。これは、実際の地下水という家庭に近い条件で確認された、数少ない日本国内のデータの1つです。海外の実験室データだけでなく、こうした国内の実証データも合わせて見ることで、より現実に近い判断がしやすくなります。
4. ROなどの方法は?
水道事業者が使う大規模な設備では、RO(逆浸透膜。高い圧力で水を通し、非常に小さな物質まで取り除く膜処理技術です)という高度な膜処理によって、PFOA・PFOSを93%以上除去できると報告されています。
RO膜は、目に見えないほど小さな穴に水を通すことで、大きな分子をふるいのように分けて取り除く仕組みです。ただしこれは、水道事業者向けの大きな施設での結果です。家庭用のRO浄水器が同じ性能を持つかどうかは、この情報だけでは分かりません。

| 方法 | Evidence setting | 確認された結果 | 重要な制約 |
|---|---|---|---|
| 煮沸のみ | 実験室(Milli-Q水にPFAS添加) | PFOA・PFOS等11〜14%減少 | 物質グループにより大きく異なる |
| 活性炭ポット型フィルター | 実験室、市販品1製品 | 10種類すべて81〜96%減少 | 1製品・1回の試験、実際の水道水ではない |
| 日本の家庭用浄水器(各務原市実証試験) | 実際の地下水、実施設での通水試験 | PFOS・PFOAとも2 ng/L未満まで減少(1製品) | 特定1製品の結果。別方式(イオン交換)は同条件で効果なし |
| 膜処理(RO・NF) | 水道事業者向け大規模施設(municipal-scale) | PFOA・PFOS 93〜99%以上除去 | 家庭用RO浄水器の性能ではない |

5. 家庭で覚えておきたいこと
ここまでの内容を踏まえて、家庭で対策を考えるときに意識しておきたいポイントをまとめます。
- 沸かすだけでは、PFOS・PFOAの確実な対策にはなりません。
- 浄水器の効果は、製品や方式によって差があります。
- 使うフィルターが、どんな物質を対象に試験されたか確認することが大切です。
- 使用期間や交換のタイミングによっても、効果は変わります。
- 除去率が高いことと、処理後の水が安全な濃度であることは、同じではありません。
まとめ
冒頭の疑問「沸かせば減るんじゃない?」に対する答えは、「PFOS・PFOAについては、あまり期待できない」です。水道水を沸かすだけでは、これらの物質を十分に減らすことはできません。一方、活性炭を使った浄水器には、高い効果が確認された例もあります。
ただし、どの方法にも条件があり、「これさえあれば安心」と言い切れる単一の答えはありません。除去率の高さと、処理後の水が安全な濃度になっていることは、同じではない点にも注意が必要です。気になる場合は、お住まいの地域の水道水の状況を確認しながら、判断することが大切です。
よくある質問
- Q. 水道水を沸かせばPFASはなくなりますか?
- A. なくなりません。研究では、PFOS・PFOAなどの主な物質は、沸騰によって11〜14%ほどしか減らないことが確認されています。
- Q. 活性炭の浄水器ならPFASを除去できますか?
- A. 実験室での試験では81〜96%の除去が確認されています。ただし特定の製品・条件での結果で、すべての活性炭フィルターに当てはまるとは限りません。
- Q. RO浄水器ならPFASを完全に除去できますか?
- A. 水道事業者向けの大規模な設備では93%以上の除去が報告されていますが、家庭用RO浄水器の性能として確認された数値ではありません。
- Q. 浄水器を使えば水道水は安全と言えますか?
- A. 特定の製品や技術だけで「安全」と言い切ることはできません。除去率は条件によって変わります。
- Q. すべてのPFASが同じように振る舞いますか?
- A. いいえ。PFOS・PFOAのように蒸気になりにくく、沸騰の影響を受けにくい物質もあれば、蒸発しやすい性質を持つ物質もあります。「PFASは全部同じ」と考えると、対策を誤ってしまう可能性があります。
出典
- Gao, C. et al. (2024) “Factors Influencing Concentrations of PFAS in Drinking Water: Implications for Human Exposure.” ACS ES&T Water 4(11):4881-4892.
- US EPA, “Questions & Answers: PFAS National Primary Drinking Water Regulation,” April 2024.
- 各務原市「PFAS処理技術の性能に関する試験 中間報告書」(2024年9月5日時点)
- Crone et al. 2019, “Occurrence of Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Source Water and Their Treatment in Drinking Water”(Article #1と共通の情報源として再利用)
用語集
- PFAS
- 有機フッ素化合物の総称。PFOS・PFOAはその代表的な物質です。
- PFOS・PFOA
- 日本の水道水質基準で規制対象となっている代表的なPFAS。
- 活性炭
- 多孔質の炭素素材。物質を吸着する性質を利用した浄水処理に使われます。
- 逆浸透膜(RO)
- 高い圧力をかけて水を通すことで、非常に小さな物質まで取り除ける膜処理技術。