環境問題をゼロから学ぶ 第15弾
冷蔵庫の奥から、食べ忘れていた食品が出てきた。そんな経験はありませんか? まだ食べられる食品が捨てられる問題は「食品ロス」と呼ばれます。食品ロスは、食べ物がもったいないというだけの話ではありません。食べ物をつくるには水や土地、エネルギーが必要で、生産から廃棄までの過程では温室効果ガスも出ます。今回は、生産・流通・消費・廃棄という一連の流れから、食品ロスと環境のつながりを整理します。
この記事の目次 10項目
食品ロスとは?
農林水産省は、食品ロスを「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」と説明しています。[1]たとえば、食べ残した料理、買ったまま使わずに捨てた食品、売れ残って廃棄された食品などです。
一方、「食品廃棄物」には、野菜の皮や骨など通常は食べない部分も含まれるのが一般的です。つまり、食品ロスは、食品廃棄物のうち本来食べられた部分に着目した言葉で、両者は同じ意味ではありません。
日本ではどれくらい発生している?
2026年6月30日に公表された推計によると、2024年度の日本の食品ロス量は年間461万トンでした(前年度は464万トン)。[2]内訳は、家庭系が224万トン(約49%)、事業系が237万トン(約51%)です。[2]1人あたりに直すと、年間約37kgです。[1]
前年度から全体では3万トン減りましたが、中身を見ると家庭系は9万トン減、事業系は6万トン増でした。[2]事業系の内訳は、食品製造業110万トン、外食産業70万トン、食品小売業48万トン、食品卸売業9万トンです。[1]
- 減少しても、年間400万トン以上が捨てられている状況は続いています
- 家庭と事業者の両方が発生源です。家庭だけの責任ではありません
世界ではどれくらい捨てられている?
国連環境計画(UNEP)の「Food Waste Index Report 2024」によると、2022年には世界の小売・外食・家庭の段階で約10億5,000万トンの食品が廃棄されたと推計されています。これは、これらの段階で消費者が利用できた食料の約19%にあたります。[3][4]内訳は、家庭が約6億3,100万トン(約60%)、外食が約2億9,000万トン、小売が約1億3,100万トンです。[3]
- 世界の数値は食べられない部分を含む場合があるため、日本の「食品ロス」とは定義が異なります
- 食品ロスを減らせば、その食料が自動的に食料不足の地域へ届くわけではありません。貧困・物流・食料へのアクセスなどへの対策も必要です
食品ロスはなぜ環境問題になるの?
食品ロスは、食べ物が無駄になるだけではありません。食品が食卓に届くまでには、さまざまな資源と環境負荷が関わっています。
① 温室効果ガスの排出
食料の生産には農業機械や肥料が、加工・輸送・保存にはエネルギーが使われ、二酸化炭素などの温室効果ガスが出る場合があります。さらに、食品廃棄物が酸素の少ない環境(埋立地など)で分解されると、メタンが発生することがあります。[7]メタンは強い温室効果ガスです。[7]
UNEPは、食品の損失と廃棄が世界の温室効果ガス排出量の8〜10%を生んでいると整理しています。[3]ただし、この割合は食品の損失と廃棄に関わる広い範囲を対象にした推計で、捨てられた食品が分解するときの排出だけを示す数字ではありません。また、すべての食品廃棄物がメタンを出すわけでもありません(処理方法によります)。
② 水や土地などの資源が活用されない
野菜や果物を育てるには農地と水が、家畜を育てるには飼料をつくる土地や水などが必要です。食べ物が捨てられると、それらの資源が食料として十分に活用されなかったことになります。
③ 廃棄物の処理にも負荷がかかる
捨てられた食品はごみとして回収・処理されます。農林水産省は、食品廃棄物はまず発生を抑えることが第一で、発生したものは再生利用する考え方を示しています。[6]堆肥や飼料、バイオガスなどへの再利用の取り組みもありますが、再利用できるからといって捨てて問題ないわけではありません。生産や流通で使われた資源や排出は取り戻せないからです。
なぜ食品ロスは発生するの?
食品ロスは、家庭だけでなく、製造・流通・販売・外食などさまざまな場面で起こります。
家庭で起こる理由
- 料理を食べきれなかった
- 買った食品を使いきれなかった
- 保存中に傷んでしまった
- 期限切れを理由に捨ててしまった
事業者で起こる理由
- 需要予測と実際の販売量のずれ、売れ残り
- 規格や品質管理上の理由
- 飲食店での食べ残し
事業者の仕組みやルールが背景にあることも多く、食品ロス削減を個人の努力だけに求めることはできません。企業・行政・消費者がそれぞれ取り組むことが大切です。
賞味期限と消費期限は何が違う?
消費者庁は、賞味期限を「おいしく食べることができる期限」、消費期限を「過ぎたら食べない方がよい期限」と説明しています。[5]どちらも未開封で、表示どおりに保存した場合の期限で、一度開封した食品は期限にかかわらず早めに食べきる必要があります。[5]
- 賞味期限を過ぎても直ちに食べられなくなるわけではありませんが、必ず安全という意味でもありません。見た目やにおい、保存状態を確認し、不安なら食べないでください
- 消費期限を過ぎた食品は食べないようにしましょう
食品ロスを減らすためにできること
① 必要な量だけ買う
買い物の前に冷蔵庫や食品庫の中身を確認し、まとめ買いを避けて、使う分・食べきれる分だけを買いましょう。[5]
② 食べきれる量をつくり、使いきる
人数や体調に合わせて作る量を調整し、残った食材から先に使います。余った料理は衛生面に注意して保存し、早めに食べきりましょう。[5]
③ 期限表示を正しく理解する
前の章の違いを知っておくと、まだ食べられる食品を必要以上に捨てずに済みます。ただし、安全性が最優先です。
④ てまえどりを意識する
すぐに使う予定なら、店の棚の手前にある商品から選ぶ「てまえどり」が呼びかけられています。手前の商品ほど期限が近いことが多く、奥から取ると手前が売れ残りやすいためです。[5]ただし、買ったあとに食べきれず捨てては意味がないので、食べる予定に合わせて選びましょう。
⑤ 食品を必要としている人につなぐ
食べきれない未開封の食品は、フードドライブなどの窓口を通じて、フードバンクから必要な人へ届けられる場合があります。[5][6]受け入れできる食品には期限や包装などの条件があるため、事前に確認しましょう。
食品ロスとSDGs
国連のSDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」には、食品に関するターゲット12.3があります。2030年までに、小売・消費段階での世界全体の1人あたり食品廃棄を半減させ、収穫後の損失を含む生産・供給網での食品の損失を減らすという内容です。[4]
目標の達成には、個人の努力だけでなく、企業や行政、国際社会の協力が欠かせません。なお、日本では食品ロス削減推進法にもとづき、毎年10月が「食品ロス削減月間」です。[6]
まとめ|よくある質問(FAQ)
- 食品ロス:本来食べられるのに捨てられる食品(日本は2024年度461万トン)
- 世界:約10億5,000万トン(2022年)。ただし日本の統計とは定義が違う
- 環境との関係:水・土地・エネルギーが無駄になり、温室効果ガスにも関わる
- 対策:必要な量だけ買う、食べきる、期限表示を正しく理解する
食品ロスの重要ポイント
- 食べ物の向こうには、水・土地・エネルギーなどの資源がある
- 日本の食品ロスは家庭と事業者の両方から発生している
- 日本と世界の数字は定義が違うため、単純に比べない
- 安全を守りつつ、まず減らす。個人だけでなく社会全体で取り組む
第16弾の予告
次回も、環境問題の用語や流れを、わかりやすく整理して解説していきます。
出典・参考文献
- 農林水産省「食品ロスとは」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
- 消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」(2026年6月30日) https://www.caa.go.jp/notice/entry/046549/
- UNEP (2024), Food Waste Index Report 2024(Key messages) https://wedocs.unep.org/bitstreams/5a45a93c-93b9-4606-a9db-ed69d7158931/download/報告書ページ:https://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/45230
- United Nations, Sustainable Development Goals – Goal 12 https://sdgs.un.org/goals/goal12
- 消費者庁「家庭での食品ロスを減らそう」 https://www.no-foodloss.caa.go.jp/eating-home.html
- 農林水産省「食品ロス・食品リサイクル」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/index.html
- U.S. EPA, Basic Information about Landfill Gas https://www.epa.gov/lmop/basic-information-about-landfill-gas