気候変動・脱炭素

森林破壊はなぜ起こる?森が失われる原因と地球環境への影響をわかりやすく解説【初心者向け第16弾】

森林破壊はなぜ起こるのでしょうか?農地開発や伐採などの原因から、生物多様性・地球温暖化・水循環への影響、世界と日本の森林問題の違い、森林を守るための対策まで初心者向けに解説します。

公開
読了目安
12 min read
公開前確認
編集部が確認済み
環境問題をゼロから学ぶ 第16弾|森林破壊

森林破壊とは、森林が失われたり、その働きが損なわれたりする問題です。この記事では、森林減少と劣化の違い、主な原因、環境への影響と対策を整理します。

森林破壊:森林と農地に転換された土地の比較イラスト
📖

これまでのおさらい

これまで、「ヒートアイランド現象」(第12弾)や「マイクロプラスチック」(第11弾)などを取り上げました。今回は、生き物・炭素・水を支える「森林」の問題です。(第12弾) (第11弾)

山を歩くと、たくさんの木々が茂り、鳥や昆虫など、さまざまな生き物が暮らしていることに気づきます。森林は、木材を提供するだけでなく、二酸化炭素を取り込み、水や土壌を守るなど、多くの役割を持っています。しかし世界では、今も森林が失われています。では、木を使うことはすべて森林破壊なのでしょうか。今回は、森林減少と森林劣化の違い、原因、影響、そして対策を整理します。

この記事の目次 9項目

森林破壊とは?森林減少と森林劣化の違い

One Phrase / 森林破壊を一言でいうと
「森が減る・傷む問題。減少と劣化を分けて考える」

「森林破壊」は、森林が失われたり、機能が損なわれたりする問題を指す一般的な言葉です。科学的に理解するには、「森林減少」と「森林劣化」を区別することが大切です。

森林減少と森林劣化の違い。森林減少は森林が農地や市街地など森林以外の土地利用に変わること。森林劣化は森林のままでも構造や機能が低下すること
図① 森林減少と森林劣化の違い(EcoLog独自の模式図)

森林減少(Deforestation)

FAO(国連食糧農業機関)の定義では、森林減少は「森林が他の土地利用に転換されること」です。[2]たとえば、森林を切り開いて農地として使い続ける場合です。一方、木材を得るために伐採しても、その後に森林として更新される土地利用なら、必ずしも森林減少には当たりません。

森林劣化(Forest Degradation)

森林劣化は、森林のままでも、樹冠の被覆や蓄積などが減り、状態や機能が低下することです。[2]地図の上では森林が残っていても、生物多様性や炭素の貯蔵などの機能が弱まっている場合があります。

用語メモ|定義について

  • ここで紹介した定義は、FAOの2000年の評価(FRA 2000)の文書にもとづきます[2]
  • 統計の評価(FRA 2025)では、定義の細部が更新されている場合があります。厳密な定義は最新の用語集で確認してください

世界ではどれくらい森林が失われている?

FAOの「世界森林資源評価2025(FRA 2025)」によると、世界の森林は41.4億ヘクタール、陸地面積の32%(およそ3分の1)を占めます。[1]

森林減少と純減少の数字を分けて読む

森林が失われる速さは、近年は緩やかになっています。森林減少は年1,760万ヘクタール(1990〜2000年)から、年1,090万ヘクタール(2015〜2025年)に減りました。[1]一方、森林の拡大(植林や自然の再生)も年678万ヘクタール(2015〜2025年)あり、これを差し引いた森林面積の純減少は年412万ヘクタールです(1990年代は年1,070万ヘクタール)。[1]

FAO FRA 2025のデータ。1990〜2000年は森林減少が年1760万ヘクタール、純減少が年1070万ヘクタール。2015〜2025年は森林減少が年1090万ヘクタール、森林の拡大が年678万ヘクタール、純減少が年412万ヘクタール
図② 世界の森林の変化(FAO FRA 2025の公表値から作成)

⚠ 「森林減少」と「純減少」は別物

  • ある地域で森林が失われても、別の地域で増えれば、全体の純減少は小さくなります
  • ただし、失われた天然の森がそのまま戻るわけではありません。どこで、どのように失われたかも重要です
  • IPCCは、1990〜2020年の森林減少による損失(4億2,000万ヘクタール超)の90%超が熱帯で起きたと整理しています[3]

森林破壊はなぜ起こるの?

森林減少・劣化の主な原因の模式図。農地や牧草地への転換、道路や鉱山などの開発は森林減少につながりやすく、不適切な伐採や火災は森林劣化につながることがある。伐採と森林減少は同じではない
図③ 森林が失われる主な原因(EcoLog独自の模式図)

① 農地や牧草地への転換

IPCCは、熱帯林の減少は主に農業(自給的な農業と工業的な農業の両方)によって引き起こされていると整理しています。[3]工業的な農業は、国際的な商品市場の動きに左右されることが多いとも指摘されています。[3]IPBESも、1980〜2000年に失われた熱帯林(約1億ヘクタール)の主な原因として、中南米の牛の放牧と東南アジアのプランテーションを挙げています。[4]

つまり、私たちが買う食品や日用品の原料が、海外の森林とつながっている場合があります。ただし、農業の形態や背景は地域によって異なります。

② 不適切な伐採や木材利用

木材は、住宅・家具・紙などに使われています。木材の利用そのものが、森林破壊を意味するわけではありません。適切な計画のもとで伐採と更新が行われれば、森林資源を続けて使うこともできます。一方で、森林の再生能力を超える伐採や不適切な管理が続けば、森林劣化につながる可能性があります。

③ 森林火災や土地開発

森林火災が生態系の一部になっている地域もあり、すべての火災が人による森林破壊というわけではありません。一方、IPCCは、森林減少に伴う乾燥や分断が、火災のリスクを高め、森林の回復力を下げると整理しています。[3]また、道路・都市・鉱山などの開発は、森林の分断や消失につながることがあります。

森林が失われると何が起こる?

森林が持つ4つの役割の図。生物多様性を支える、炭素を吸収・貯蔵する、水循環に関わる、土壌を保全する
図④ 森林が持つ4つの役割(EcoLog独自の模式図)

① 生物多様性が失われる

例えば、森林には、鳥・哺乳類・昆虫・菌類・土壌生物など、さまざまな生き物が暮らし、食べる・食べられる関係や、花粉の運搬、落葉の分解などでつながっています。生息場所は森林の消失によって減り、道路や農地で分断されると、移動や繁殖にも影響が出ます。IPBESは、2019年の地球規模評価で、陸と海の利用の変化(森林の農地化など)を、生物多様性に最も大きな影響を与えている直接的な要因に挙げました。[4]

② 地球温暖化に影響する

また、森林は、光合成で二酸化炭素を取り込み、樹木や土壌に炭素を蓄えます。伐採・焼失したり、他の土地利用に変わったりすると、蓄えられた炭素の一部が大気中へ放出されることがあります。ただし、炭素の出入りは、樹種・樹齢・土壌・管理方法・伐採後の木材の使われ方などで変わります。IPCCは、気候変動の影響などで、アマゾンの熱帯林の炭素吸収の力が弱まってきたと評価しています(確信度は中程度)。[3]

森林を守ることは気候変動対策の一つですが、化石燃料の排出削減の代わりにはなりません。

③ 水循環や土壌に影響する

IPCCは、森林減少は一般に降水を減らし、気温を上げること、地表を流れる水(表面流出)が増えることが多いことを整理しています(影響の大きさは空間の広さで変わります)。[3]ただし、森林があれば土砂災害を必ず防げるわけではありません。斜面の地質・地形、雨の強さ、森林の状態によって条件は異なります。

日本でも森林破壊は起きている?

日本は、国土の約3分の2(2,502万ヘクタール、2022年3月末)が森林の国です。そのうち約4割(1,009万ヘクタール)が人工林で、人工林の約6割は51年生以上と、本格的な利用期を迎えています。[5]

表は横にスクロールできます。

項目世界の熱帯林日本
主な課題農地・牧草地などへの転換による森林減少[3]人工林の適切な管理と更新、担い手の確保
森林の状況失われている地域が多い国土の約3分の2が森林[5]

熱帯林の減少と日本の森林管理はどう違う?

世界の熱帯林の減少と、日本の森林問題は、同じではありません。日本では、林業の担い手不足、所有者や境界の把握、管理の費用なども、地域によって課題になっています。また、伐採しなければ自然環境が必ず良くなるわけでもありません。人工林は、立地や状態に応じて間伐などの管理が必要になる場合がありますが、すべての森林に間伐が必要なわけではなく、自然林の保全と人工林の管理では目的が異なります。

森林を守るために行われている対策

① 森林を保全する

生物多様性の高い森林や重要な生息地を守ること(保護地域の設定、地域住民・先住民族の権利を尊重した森林管理など)が、森林減少を防ぐうえで重要です。

② 持続可能な森林管理

森林を長く維持しながら、木材などの資源を使う考え方です。森林の再生能力、生物多様性、土壌・水環境への影響を考えて管理します。

③ 森林の再生と植林

さらに、失われた森林を回復させるため、自然再生や植林が行われています。ただし、植林すれば、もとの森林が持っていた生物多様性や土壌の機能がすぐに戻るわけではありません。単一樹種の植林地と、多様な樹種の自然林では、生態系の構造や働きが異なります。地域の気候・土壌・もとの植生を考えた再生が必要です。

④ 森林減少につながらない調達

食品・木材・紙などの原料の生産が、森林減少につながっていないかを確かめる取り組みも進められています。企業の調達方針の改善や、原料の産地をたどれる仕組みが重要です。

私たちにできること

① 製品の背景に関心を持つ

まず、木材・紙・食品が、どこで、どのように生産されたのかに関心を持つことが第一歩です。

② 森林認証などを参考にする

例えば、FSCやPEFCなどの森林認証は、森林管理や木材の流通の基準を確認する手がかりになります。ただし、認証があるだけで、すべての環境影響がなくなるわけではありません。

③ 資源を大切に使う

紙や木材製品を長く使い、無駄にしないことも大切です。同時に、適切に管理された森林資源を持続的に利用する視点も必要です。

④ 森林保全の取り組みを知る

地域の森林整備や自然保護の活動を通じて、森林の状態や地域の課題を知ることが、適切な行動につながります。

One Phrase / 今回のポイントを一言でいうと
「木を使うことと守ることは両立できる。大切なのは、どう管理するか」

まとめ|よくある質問(FAQ)

📌 今回のおさらい

  • 森林減少:森林が他の土地利用に変わること/森林劣化:森林のまま機能が低下すること
  • 世界:森林は41.4億ha(陸地の32%)。森林減少は年1,090万ha(2015〜2025年)
  • 原因:熱帯林では農業の拡大が主。伐採=森林減少ではない
  • 対策:保全・持続可能な管理・再生・森林減少につながらない調達

森林破壊とは何ですか?

森林が失われたり、森林の生態系や機能が損なわれたりする問題です。森林減少と森林劣化を区別して理解することが重要です。

主な原因は何ですか?

世界の熱帯林の減少では、農地や牧草地への転換(農業の拡大)が主要な原因とされています。ただし、原因は地域によって異なります。

地球温暖化と森林破壊は関係しますか?

その結果、森林が失われると、蓄えられていた炭素が放出されたり、炭素の吸収・貯蔵の能力が変わったりするため、気候変動に影響します。ただし、影響の大きさは森林の種類や管理で異なります。

木を切ることはすべて森林破壊ですか?

いいえ。適切な管理のもとで伐採と森林の更新が行われる場合、必ずしも森林減少には当たりません。

植林すれば森林破壊は解決しますか?

植林は対策の一つですが、自然林が持つ生物多様性や土壌の機能がすぐに回復するわけではありません。既存の森林の保全も重要です。

日本でも森林破壊は問題になっていますか?

日本では、熱帯地域のような大規模な農地転換とは異なり、人工林の適切な管理、森林資源の更新、地域ごとの森林保全などが重要な課題です。

Summary / まとめ

森林破壊の重要ポイント

  • 森林は、生き物・炭素・水・土壌を支えている
  • 問題は「木を切ること」ではなく、森林減少と劣化。管理のしかたが鍵
  • 世界と日本では課題の性質が違う
  • 私たちの消費も、海外の森林とつながっているかもしれない
Coming Soon / 次回予告

第17弾の予告

次回も、環境問題の用語や流れを、わかりやすく整理して解説していきます。

🌱
あわせて読みたい(初心者向けシリーズ)

ヒートアイランド現象とは?原因・地球温暖化との違い・対策を解説(第12弾)

緑や土地利用の変化が気温に関わる話として、第12弾もどうぞ。

第12弾を読む →

出典・参考文献

  1. FAO (2025), Global Forest Resources Assessment 2025/FAO「Global deforestation slows, but forests remain under pressure」 出典資料を読む/FRA 2025ページ
  2. FAO (2000), FRA 2000 on definitions of forest and forest change, Forest Resources Assessment Working Paper 33 出典資料を読む
  3. IPCC (2022), Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability, Cross-Chapter Paper 7: Tropical Forests 出典資料を読む
  4. 補足資料・制度と対策

    IPBES (2019), Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services(国連による要点の紹介:UN Sustainable Development)/ 出典資料を読む
  5. 林野庁「令和7年度 森林・林業白書」第1章 出典資料を読む

あなたはどう考えますか?

この記事を読んで、あなた自身の考えを教えてください。回答は任意・匿名で、EcoLog読者からの回答として記録します。日本人全体や社会の意見を代表する調査ではありません。

この環境問題をどの程度深刻だと思いますか?
この環境問題をどの程度優先して解決すべきだと思いますか?
この環境問題にどの程度関心がありますか?

回答は匿名で送信され、個人を特定する情報は取得しません。集計結果は将来EcoLog上で公開する予定ですが、統計的に社会全体を代表するものではありません。

みんなが考える環境問題:テーマ別の集計を見る