環境問題入門

マイクロプラスチックは水道水に含まれている? 検出状況と健康影響について今分かっていること

(イメージ写真) この記事の要点 世界の水道水を対象にした複数の研究をまとめると、サンプルの24%〜100%からマイクロプラスチックが検出されています。ただし研究ごとに測定方法や検出できる粒子の大きさが違うため、この数字 […]

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この記事の要点

  • 世界の水道水を対象にした複数の研究をまとめると、サンプルの24%〜100%からマイクロプラスチックが検出されています。ただし研究ごとに測定方法や検出できる粒子の大きさが違うため、この数字にはかなりの幅があります。
  • 日本国内(北海道釧路市・沖縄県)の水道水を対象にした調査でも、地下水を水源とする水道水から1立方メートルあたり78個〜2130個のマイクロプラスチックが検出されています。
  • 実際の浄水処理施設10か所を調べた最近の研究では、2マイクロメートル以上のマイクロプラスチックについて97.5%〜100%という高い除去率が報告されています。
  • 「検出されていること」と「ヒトへの健康影響が確認されていること」は別の話です。2024年の系統的レビューでは、選定基準を満たした研究のうち、ヒトを対象にした観察研究は3件、動物実験は28件でした。
  • 現行の日本の水道水質基準等(水質基準項目・水質管理目標設定項目・要検討項目)には、マイクロプラスチックを対象とした専用の項目は確認されていません。

「毎日飲んでいる水道水にもマイクロプラスチックは入っているの?もし入っているなら、健康への影響を心配する必要はある?」——そう感じたことがある人は少なくないはずです。

この記事では、水道水・飲料水中のマイクロプラスチックについて、(1)実際にどの程度検出されているのか、(2)なぜ研究によって数字が大きく違うのか、(3)浄水処理でどこまで除去できるのか、(4)ヒトへの健康影響について科学的にどこまで分かっているのか、を国際機関の報告書・国内外の研究論文をもとに整理します。

特に大切にしたいのは、「マイクロプラスチックが検出される」ことと「それによってヒトの健康に影響が出ることが確認されている」ことを混同しないことです。この2つは科学的にはまったく別の段階の話です。

水道水中マイクロプラスチックの検出範囲を示す図。国際レビューでは検出頻度24〜100%、濃度0〜1247個/L。日本国内調査では78〜2130個/m³(地下水由来)。
国際的な系統的レビュー(Danopoulos et al., 2020)と日本国内の調査(Kameda et al., 2023)における水道水中マイクロプラスチックの検出範囲。測定方法・粒径の定義が異なるため、両者を直接比較することはできません。

1. 水道水からマイクロプラスチックはどれくらい見つかっているの?

水道水中のマイクロプラスチックに関する既存の研究をまとめた系統的レビュー(Danopoulos et al., 2020)によると、対象となった研究全体で、水道水サンプルの24%〜100%からマイクロプラスチックが検出されました。検出された濃度についても、研究によって大きく異なり、1リットルあたり0個〜1247個という報告まであります。

この「24%〜100%」「0〜1247個/L」という幅の広さは、決して測定がいい加減という意味ではありません。後述するように、研究ごとに使っている測定方法や、検出できる粒子の大きさの下限が異なるためです。このレビュー自体が、複数の研究をまとめた際の「範囲」であり、世界のどこでも共通して見られる「平均的な濃度」を示すものではない点に注意が必要です。

日本国内でも、直接の測定例があります。千葉工業大学の研究チームによる調査(Kameda et al., 2023)では、北海道釧路市と沖縄県の水道水を対象に、20マイクロメートル以上のマイクロプラスチックを測定する新しい採取・分析方法を開発し、実際に測定を行いました。その結果、地下水を水源とする水道水では、1立方メートルあたり78個〜2130個のマイクロプラスチックが検出されました。

このように、水道水からマイクロプラスチックが検出されること自体は、国内外の複数の研究で確認されています。ただし、この日本の調査結果と、先ほどの国際的なレビューの数字を単純に比較することはできません。対象となった粒子の大きさの定義、測定方法、検出限界がそれぞれ異なるためです(詳しくは次の章で説明します)。

ナノプラスチックからマイクロプラスチックまでの粒径スケールを示す概念図。数値は例示であり、特定の測定データを表すものではない。
マイクロプラスチックとナノプラスチックの大きさの違いを示す概念図です。特定の研究データではなく、一般的なスケール感を示す図です。

2. 研究によって数字が全然違うのはなぜ?

前の章で紹介した数字の幅の大きさに、驚いた方もいるかもしれません。この違いの大きな理由の一つが、「マイクロプラスチック」として測定している粒子の大きさの範囲が、研究によって異なることです。

Kameda et al.(2023)の日本の調査では、検出されたマイクロプラスチックの大きさ(中央値)は、対象地点によって30.1マイクロメートルから60.4マイクロメートル程度でした。この研究では20マイクロメートル以上の粒子を対象に測定方法を開発しています。

一方で、これより小さい粒子まで測定できる手法を使う研究もあれば、逆にもっと大きい粒子だけを数えている研究もあります。測定できる粒子の大きさの下限が違えば、当然「検出された個数」も変わってきます。これは、目の細かい網と粗い網で川の中の生き物を数えるときに、捕まえられる数が変わってくるのと似ています。

さらに、粒子を数える方法(顕微鏡での目視、赤外分光法、ラマン分光法など)や、サンプルを採取する量・場所によっても結果は変わります。この研究(Kameda et al., 2023)自体、測定方法の開発によって91.0%という高い回収率(精度)を達成したと報告しており、測定方法そのものが研究のテーマになるほど、この分野の測定は技術的に難しいということでもあります。

つまり、「水道水中のマイクロプラスチックの数」を一つの決まった数字で語ることは、現時点の科学ではまだ難しいのが実情です。

3. 浄水処理でちゃんと除去されているの?

水源の水にマイクロプラスチックが含まれていたとしても、浄水処理の過程でどれだけ除去されるかは、また別の重要な問題です。

2025年に発表された研究(Balkenbusch et al., 2025)では、実際に稼働している10か所の浄水処理施設を対象に、マイクロプラスチックの除去率を調べました。その結果、2マイクロメートル以上のマイクロプラスチックについて、施設全体で97.5%〜100%という高い除去率が報告されています。

ここで大切なのは、この数字が「10施設を対象としたこの研究における、2マイクロメートル以上の粒子についての除去率」だということです。すべての浄水処理施設や、あらゆる大きさの粒子について同じ結果が当てはまるとは限りません。実際に稼働している浄水処理施設で高い除去率が報告された事例の一つです。

なお、これは飲料水をつくる浄水処理とは別の、下水処理についての知見ですが、WHOの報告書(2019年)では、下水処理によってマイクロプラスチックの90%以上を効果的に除去できるとされており、水を再び環境に戻す前の段階でも、処理技術が一定の役割を果たしていることがうかがえます。

浄水処理施設におけるマイクロプラスチック除去率 (Balkenbusch et al., 2025)
対象 粒径条件 除去率
実際の浄水処理施設10か所(全体) 2 μm以上 97.5%〜100%
実際に稼働している10か所の浄水処理施設を対象とした研究の結果です。すべての浄水処理施設・あらゆる粒径に当てはまるとは限りません。

4. 健康への影響はあるの?

ここが、この記事で一番丁寧に伝えたいポイントです。

まず大前提として、「マイクロプラスチックが水道水から検出される」ことと、「それによってヒトの健康に影響が出ることが科学的に確認されている」こととは、まったく別の段階の話です。前者は複数の研究で確認されていますが、後者については、現時点ではまだ十分なエビデンスが蓄積されていません。

2024年に発表された系統的レビュー(Chartres et al., 2024)は、マイクロプラスチック曝露がヒトの消化器・生殖・呼吸器に与える影響について、既存の研究を厳密な手法(Navigation Guideという系統的レビュー手法)で評価しています。この研究によると、選定基準を満たした研究のうち、ヒトを対象にした横断的観察研究はわずか3件で、残る28件は動物を用いた実験研究でした。

つまり、マイクロプラスチックの健康影響に関する科学的知見の大部分は、現時点では動物実験から得られたものであり、ヒトを対象にした研究はまだ非常に限られています。この系統的レビューでは、消化器系や生殖系への影響について「疑われる(suspected)」という評価がされていますが、これは「確立された(established)」事実として断定できる段階ではないことを意味します。動物実験で見られた影響が、そのままヒトにも同じように当てはまるとは限りません。

粒子の大きさと体内への吸収についても、不確実な部分が残っています。WHO(2019年)は、150マイクロメートルより大きい粒子は体内にほとんど吸収されない可能性が高いとしています。ただし、これは「150マイクロメートルより小さい粒子なら体内に吸収される」ということを意味するものではありません。より小さい粒子(ナノプラスチックを含む)については吸収の可能性が指摘されているものの、データがまだ限られており、WHO自身もこの点についての不確実性を認めています。

WHOの2019年の報告書全体としての結論は、現時点で得られている限られたデータからは、水道水中のマイクロプラスチックが人体に重大な健康リスクをもたらすという明確な証拠は見られない、というものです。ただし、これは「安全性が証明された」という意味ではなく、「現時点で懸念すべき証拠が十分に見つかっていない」という、控えめな評価であることに注意が必要です。WHO自身も、より多くの研究の必要性を指摘しています。

マイクロプラスチック健康影響レビューにおけるEvidenceの構成 (Chartres et al., 2024)
研究の種類 件数
ヒトを対象にした観察研究 3件
動物を用いた実験研究 28件
この表は、選定基準を満たした研究の内訳(Evidence構成)を示すものであり、健康影響の大きさを比較するものではありません。
浄水処理施設をイメージした写真(特定の研究対象施設を撮影したものではありません)
(イメージ写真)

5. 日本には基準があるの?

日本のPFAS(有機フッ素化合物)については、2026年から水質基準として明確な数値(50 ng/L)が定められていますが、マイクロプラスチックについては状況が異なります。

現行の日本の水道水質基準(水質基準に関する省令に基づく52項目の水質基準項目、26項目の水質管理目標設定項目、46項目の要検討項目)を確認したところ、マイクロプラスチックを対象とした専用の項目は、いずれの区分にも含まれていません。

日本学術会議は2020年に、マイクロプラスチックによる水環境汚染について、生態系や健康への影響に関する研究の必要性を指摘する提言を発表しています。この提言では、飲料水中のマイクロプラスチックについて現時点では低い懸念が示唆されているとしつつ、生態系全体への影響や長期的な影響についてはさらなる研究が必要だとしています。つまりこの提言自体も「基準を設定すべきだ」という主張ではなく、「まだ研究が必要な段階だ」という位置づけです。

このように、マイクロプラスチックについては、PFASのような明確な数値基準はまだ存在せず、科学的な知見の蓄積が続いている段階にあると言えます。

まとめ:結局、心配すべきなの?

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

  • 水道水からマイクロプラスチックが検出されること自体は、国内外の研究で確認されています。ただし、その数字は研究によって大きく異なり、単純に一つの数字で語ることはできません。
  • 実際の浄水処理施設を対象にした研究では、高い除去率が報告されています。
  • ヒトの健康への影響については、現時点では動物実験が中心で、ヒトを対象にした研究はまだ限られています。「検出されている」ことと「健康影響が確認されている」ことを混同しないことが重要です。
  • 現行の日本の水道水質制度では、マイクロプラスチックを対象とした専用の項目は確認されておらず、科学的な研究が進行中の段階です。

過度に不安を煽る必要はありませんが、「まったく心配ない」と断定できる段階でもありません。これは発展途上の研究分野であり、今後、測定方法の標準化やヒトを対象にした研究が進むことで、より確かなことが分かってくると期待されます。ボトル水についても、実は水道水より高い割合でマイクロプラスチックが検出されているという報告があり(後述のFAQ参照)、「ボトル水に切り替えれば安心」というわけでもない点は覚えておく価値があります。

よくある質問

Q. 水道水にマイクロプラスチックが心配なら、ボトル水(ペットボトルの水)に変えた方がいいですか?
A. 必ずしもそうとは言えません。前述の系統的レビュー(Danopoulos et al., 2020)によると、ボトル水のサンプルでは92%〜100%という、水道水よりもむしろ高い割合でマイクロプラスチックが検出されています。「ボトル水の方が安全」と単純に言うことはできません。
Q. 浄水器を使えば除去できますか?
A. 前述の研究(Balkenbusch et al., 2025)は家庭用の浄水器ではなく、実際の浄水処理施設(2マイクロメートル以上の粒子で97.5%〜100%の除去率)を対象にしたものです。家庭用浄水器の効果については、この記事で紹介した研究の対象外であり、現時点で確たることは言えません。
Q. 日本政府は今後、基準を作る予定はありますか?
A. 現行の水質基準には専用の項目がないことを確認していますが、今後基準が新設されるかどうかについては、この記事の執筆時点で確認できる情報はありません。科学的知見の蓄積状況に応じて、今後の検討課題となる可能性があります。

出典

  1. World Health Organization (2019). Microplastics in drinking-water. Geneva: WHO.
  2. 日本学術会議 健康・生活科学委員会・環境学委員会合同環境リスク分科会 (2020). 「マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス」(提言).
  3. 亀田豊, 藤田恵美子, 平井一帆 (2023). 「水道水中の20 μm以上のマイクロプラスチックの採取分析方法の開発」. 水環境学会誌, 46(5), 131-139.
  4. Danopoulos, E., Twiddy, M., & Rotchell, J. M. (2020). Microplastic contamination of drinking water: A systematic review. PLOS ONE, 15(7), e0236838.
  5. Chartres, N., Cooper, C. B., Bland, G., Pelch, K. E., Gandhi, S. A., BakenRa, A., & Woodruff, T. J. (2024). Effects of Microplastic Exposure on Human Digestive, Reproductive, and Respiratory Health: A Rapid Systematic Review. Environmental Science & Technology, 58(52), 22843–22864.
  6. Balkenbusch, C., Glienke, J., Wu, Y., Munno, K., Jung, M., Almuhtaram, H., & Andrews, R. C. (2025). Microplastic removal across ten drinking water treatment facilities and distribution systems. npj Clean Water, 8(1), 103.
  7. 環境省 水・大気環境局水環境課. 「水質基準項目と基準値」「水質管理目標設定項目と目標値」「要検討項目」. (令和8年4月1日時点)

用語集

マイクロプラスチック
一般的に5ミリメートル以下の微小なプラスチック粒子を指します。
ナノプラスチック
マイクロプラスチックよりもさらに小さい(一般的に1マイクロメートル未満とされる)プラスチック粒子。測定方法や生体への挙動がマイクロプラスチックとは異なるため、この記事では明確に区別して扱っています。
系統的レビュー(システマティックレビュー)
特定のテーマについて、既存の複数の研究を網羅的かつ体系的な手法で収集・評価する研究手法。
PET・PP
ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリプロピレン(PP)の略です。