前回は、すべての国が参加する気候変動の約束「パリ協定」を解説しました。今回は少し視点を変えて、身近なものから生まれる「マイクロプラスチック」を取り上げます。(初心者向けシリーズ一覧はこちら)
ペットボトル、食品の包装、衣服…。プラスチックは軽くて丈夫なため、私たちの暮らしのあらゆる場面で使われています。しかし、環境中に出たプラスチックは、長い時間をかけて目に見えないほど小さな破片になることがあります。今回は、マイクロプラスチックがどこから生まれ、どこへ行くのかを、「わかっていること」と「まだわかっていないこと」を分けて整理します。
1 マイクロプラスチックとは?一言で言うと
一般的に、大きさが5mm未満のプラスチックの破片や繊維を「マイクロプラスチック」と呼びます。[1]5mmは、鉛筆の消しゴムより小さいくらいの大きさです。
マイクロプラスチックの問題は、海に浮かぶごみだけではありません。道路や農地の土、さらには空気中からも見つかっています。
2 どこから発生する?
発生源は、大きく2つに分けられます。
① 最初から小さく作られたもの(一次マイクロプラスチック)
製品の原料となる小さなプラスチックの粒(ペレット)や、洗顔料などに使われていた微細な粒(マイクロビーズ)が当てはまります。[1][3]
② 大きなものが細かくなったもの(二次マイクロプラスチック)
ペットボトルやレジ袋などが、日光・熱・風・波で劣化してもろくなり、細かく砕けたものです。[1]使っている間にすり減ることもあり、たとえばタイヤのかけらは雨で水路へ流れ込みます。[1]また、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維の衣類を洗濯すると、細かな繊維(マイクロファイバー)が水に出ていきます。[2]
- タイヤのかけらにはゴムやさまざまな添加物が含まれます
- そのため、研究や統計によって「マイクロプラスチックに含めるか」の範囲が異なることがあります[7]
つまり、マイクロプラスチックは「ごみを捨てたとき」だけでなく、ふだんどおりの生活の中でも環境に出ていく可能性があるのです。
3 海だけではない!存在する場所
マイクロプラスチックは、海に限らずさまざまな場所で報告されています。たとえば道路上のタイヤ粒子は、雨で側溝や河川へ運ばれることがあります。[1][7]川を下る間にも移動し、世界各地の海岸でも見つかっています。[3]
ただし、すべてが海まで届くわけではありません。タイヤ粒子については、途中の河川などに留まる分もあると見積もる研究があります。[7]
さらに、風に乗って空気中を運ばれることもあります。ヨーロッパの山地から北極圏まで集めた雪を調べた研究では、人里離れた北極の雪からもマイクロプラスチックが検出され、その多くは大気を通じて運ばれたものと考えられています。[8]
4 生き物や人への影響は? 重要
マイクロプラスチックは、海の生き物からも見つかっています。[3]生き物が取り込むと、粒子の大きさ・形・種類・量によっては、体に影響する可能性があります。また、プラスチックには添加剤が含まれることがあり、環境中で他の化学物質が付着することもあるため、粒子そのものと関連する化学物質の両方が研究されています。[4]
- 「検出された」=そこにあることが確認された
- 「影響を与える可能性がある」=影響が心配され、研究されている
- 「健康被害が確認された」=実際に被害が確認された
世界保健機関(WHO)は2022年の報告書で、食品・飲料水・空気を通じた曝露と健康影響について、2021年12月までの研究を整理しました。[4]人がマイクロプラスチックにさらされていることは報告されていますが、健康へのリスクを評価するには、粒子の種類や大きさ、曝露量などについてさらに研究が必要とされています。[4]
「見つかった=すぐ危険」と考えすぎず、わかっていることと、まだわからないことを分けて受け止めることが大切です。
5 土壌や森林にもある?
農地では、農業用のプラスチックフィルムなどが使われています。こうした資材が土の中で劣化したり、回収しきれずに残ったりすると、土壌中でマイクロプラスチックになることがあります。また、大気からの降下なども土壌に入る経路の一つとされています。[9]
森林についても研究が進んでいます。2025年に発表された研究は、ドイツ・ヘッセン州の森林4か所で土を調べ、20マイクロメートル(0.02mm)以上の粒子がすべての層から見つかったと報告しました。[5]研究者は、大気からの降下と落ち葉が主な入り口になっていると結論づけています。[5]
- 調べたのは4地点で、雨を集めた期間は約2か月と限られています[5]
- 他の森林や地域でも同じとは限りません
- 森林全体の蓄積量や、生態系への影響は今後の研究課題です
森林は水をたくわえ、土を守り、多くの生き物を支えています。そこにプラスチックがどう入り、どこにたまるのかを調べることは、環境を理解するうえで大切な研究テーマです。
6 私たちにできること 3つの視点
ただし、個人の努力だけで解決できるわけではありません。企業や行政による取り組みも欠かせません。大切なのは、プラスチックを一切使わないことではなく、必要な場面で適切に使い、環境へ流出させないことです。
7 まとめ|よくある質問(FAQ)
- マイクロプラスチック:大きさ5mm未満の小さなプラスチック
- 発生源:最初から小さいもの(一次)と、細かくなったもの(二次)
- 広がり:海だけでなく、河川・土壌・森林・大気でも報告されている
- 影響:健康への影響は、さらに研究が必要
- 対策:減らす・くり返し使う・流出させない仕組みづくり
マイクロプラスチックの重要ポイント
- 身近な製品や暮らしから発生し、水や風でさまざまな環境へ広がる
- 「見つかった」ことと「健康被害が確認された」ことは別のこと
- わかっていることとまだわからないことを分けて考える
- 使い方を見直し、環境へ流出させない仕組みをつくることが大切
次回もお楽しみに!
次回も、環境問題の用語や流れを、わかりやすく整理して解説していきます。
- NOAA(米国海洋大気庁), What are microplastics? https://oceanservice.noaa.gov/education/tutorial-coastal/marine-debris/md04.html
- NOAA Marine Debris Program, What are microplastics? Microfibers? https://marinedebris.noaa.gov/what-are-microplastics-microfibers-0
- NOAA Monterey Bay National Marine Sanctuary, Following Microplastics from Shore to Sanctuary(2026年2月10日) https://montereybay.noaa.gov/new/260210followingmicroplastics.html
- World Health Organization (2022), Dietary and inhalation exposure to nano- and microplastic particles and potential implications for human health. https://www.who.int/publications/i/item/9789240054608/
- Weber, C. J. & Bigalke, M. (2025), Forest soils accumulate microplastics through atmospheric deposition. Communications Earth & Environment, 6, 702. https://doi.org/10.1038/s43247-025-02712-4
- UNEP (2023), Turning off the Tap: How the world can end plastic pollution and create a circular economy. https://www.unep.org/resources/turning-off-tap-end-plastic-pollution-create-circular-economy
- Kole, P. J. et al. (2017), Wear and Tear of Tyres: A Stealthy Source of Microplastics in the Environment. Int. J. Environ. Res. Public Health, 14(10), 1265. https://doi.org/10.3390/ijerph14101265
- Bergmann, M. et al. (2019), White and wonderful? Microplastics prevail in snow from the Alps to the Arctic. Science Advances, 5(8), eaax1157. https://doi.org/10.1126/sciadv.aax1157
- Qi, R. et al. (2020), Behavior of microplastics and plastic film residues in the soil environment: A critical review. Science of the Total Environment, 703, 134722. https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.134722