前回は、身近な製品から生まれ、水や風で広がる「マイクロプラスチック」を解説しました。今回は、私たちが毎日暮らす「街の暑さ」に注目します。(初心者向けシリーズ一覧はこちら)
夏の暑い日、アスファルトの道路から熱が伝わってくるように感じたことはありませんか? 一方、近くの公園や木陰に入ると、少し涼しく感じることがあります。同じ街の中でも暑さの感じ方が違う理由の一つが、「ヒートアイランド現象」です。今回は、原因、地球温暖化との違い、暮らしへの影響、そして対策を整理します。
1 ヒートアイランド現象とは?一言で言うと
気温の分布を地図にすると、高温の地域が都市を中心に島のように広がります。そのため「ヒートアイランド(熱の島)」と呼ばれています。[1]
この現象は夏だけのものではありません。気象庁の解説では、都市化の影響は8月より1月のほうが大きいと示されています。これは主に、夜間の現象の強さの違いによると考えられています。[8]
つまり、ヒートアイランド現象は、都市のつくり方や土地の使い方と深く関係しているのです。
2 なぜ都市は暑くなるの? 3つの要因
気象庁は、主な要因として次の3つを挙げています。[2]
① アスファルトやコンクリートが熱を蓄える
道路や駐車場、建物などの人工的な地表面(人工被覆面)は、日中の日射熱をため込み、夜間にも放出して気温が下がるのを妨げます。一方、森林や草地では、水分が蒸発するときに熱が使われます。[2]
② 建物が密集して熱が逃げにくい
建物が高く、密集するほど、地表から空へ熱が逃げにくくなり(放射冷却が弱まり)、風通しも悪くなります。その結果、地表付近に熱がこもります。[2]
③ エアコンや自動車などから熱が出る
産業や社会の活動に伴って出る熱を「人工排熱」と呼びます。たとえばエアコンは、室内を冷やす一方で、室外機から屋外へ熱を出します。気象庁は、都心部では昼間の排熱量が局所的に1平方メートルあたり100ワットを超えると見積もっています。[2]
- アスファルトの表面は、とても熱くなることがあります
- ただし、それがそのまま周囲の気温になるわけではありません
- この記事では、地表面の温度と気温を分けて説明しています
3 地球温暖化とは何が違う?
どちらも人間活動が原因で気温が上がるという点は共通です。違いは、広がる範囲と原因です。[3]
| 項目 | ヒートアイランド現象 | 地球温暖化 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 人工的な構造物や排熱 | 温室効果ガスの増加 |
| 広がり | 都市を中心とした限られた範囲 | 地球規模 |
ただし、両者は無関係ではありません。気象庁によると、東京・名古屋・大阪では、地球温暖化の影響にヒートアイランド現象が加わり、全国平均を上回る割合で気温が上昇しています。[3]都市化の影響が比較的小さい地点との比較でも、大都市では特に日最低気温の上昇率が大きいとされています。[4]
- 都市の暑さをすべて地球温暖化のせいにはできません
- 地球規模の変化と、都市特有の変化を分けて考えることが大切です
4 私たちの生活への影響
① 夜になっても気温が下がりにくい
気象庁は、都市化の影響は日中より夜間のほうが大きいとしています。日中は、大気がよく混ざって都市の余分な熱が上空へ広がります。しかし夜間は混ざり方が弱く、熱が地表近くの薄い層にたまるためです。[5]
② 熱中症のリスク
気温が高くなると、暑さによる体への負担が増える可能性があります。ただし、熱中症は気温だけで決まるわけではありません。環境省は、気温・湿度・風の弱さなどの環境の条件に、体の状態や行動が重なって起こるとしています。[9]
③ 冷房の使用が増える
暑い日が続くと冷房の使用が増え、エネルギー消費の増加につながる場合があります。環境省の推計では、東京23区で気温上昇に影響する熱のうち人工排熱が約5割で、そのうち建物に由来するものが約半分とされています。[10]
都市の暑さを減らすことは、健康とエネルギーの両方を考えるうえで大切なのです。
5 街の緑は暑さを和らげる? 対策
街路樹や公園、屋上緑化などの緑には、2つの働きがあります。米国環境保護庁(EPA)も、日陰と蒸発散を、暑さを和らげる仕組みとして紹介しています。[6]
- 緑を増やせば、必ず同じだけ気温が下がるわけではありません
- 樹木の種類や大きさ、水分、風通し、建物の配置で効果は変わります
- EPAも、効果は各地の条件で異なるとしています[6]
そのため都市緑化は、植物を増やすだけでなく、どこにどう配置するかも重要です。また、日陰で涼しく感じること(体感)と、実際の気温が下がることは、別の話です。
6 ヒートアイランド現象を減らすには?
日本では、国の「ヒートアイランド対策大綱」で、対策の柱として人工排熱の低減・地表面被覆の改善・都市形態の改善・ライフスタイルの改善などが示されています。[10]環境省は、ヒートアイランド対策のガイドラインも公開しています。[7]
都市の暑さは一つの原因だけで生じるものではありません。土地利用・建物・交通・緑地を総合的に考える必要があります。
7 まとめ|よくある質問(FAQ)
- ヒートアイランド現象:都市の気温が周囲より高くなる現象
- 原因:人工被覆面の蓄熱・建物の密集・人工排熱
- 地球温暖化との違い:都市を中心とした限定的な現象。ただし両方が重なることもある
- 対策:緑を増やす・断熱・屋根や舗装の工夫・排熱を減らす
ヒートアイランド現象の重要ポイント
- 都市の気温が周囲より高くなる現象で、夜間や冬にも現れる
- 原因は、蓄熱・建物の密集・人工排熱の3つ
- 地球温暖化とは別の現象だが、都市では両方が重なる
- 緑化など複数の対策を組み合わせて暑さを和らげる
次回もお楽しみに!
次回も、環境問題の用語や流れを、わかりやすく整理して解説していきます。
マイクロプラスチックとは?発生原因・影響・対策を解説(第11弾)
身近な製品から広がるマイクロプラスチックを紹介した第11弾です。
初心者向けシリーズを読む →- 気象庁「ヒートアイランド現象とはどのようなものですか?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/cpdinfo/himr_faq/01/qa.html
- 気象庁「ヒートアイランド現象の要因は何ですか?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/cpdinfo/himr_faq/02/qa.html
- 気象庁「ヒートアイランド現象と地球温暖化は違うのですか?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/cpdinfo/himr_faq/03/qa.html
- 気象庁「ヒートアイランド現象:観測データ・長期変化傾向」 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/index_himr.html
- 気象庁「都市化の影響は日中と夜間で違いはあるのですか?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/cpdinfo/himr_faq/07/qa.html
- U.S. Environmental Protection Agency, Benefits of Trees and Vegetation. https://www.epa.gov/heatislands/benefits-trees-and-vegetation
- 環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン」 https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/guideline.html
- 気象庁「都市化の影響は夏と冬で違いはあるのですか?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/cpdinfo/himr_faq/08/qa.html
- 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症とは」 https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php
- 環境省 環境技術実証事業 ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)「背景・関連情報」 https://www.env.go.jp/policy/etv/field/f05/p2.html