前回のおさらい|第16弾
前回は、森林が失われる原因と、気候・生き物・水への影響を学びました。今回は、気候変動対策と土地利用の両方に関わる再生可能エネルギーを取り上げます。森林破壊の原因と対策を読む
この記事でわかること
再生可能エネルギーとは、太陽光や風、水など、自然界で繰り返し補充されるエネルギーです。この記事では、代表的な5種類の仕組みとメリット、環境への影響、安定供給の課題を整理します。
屋根の太陽光パネルや大きな風車を見て、「製造時にもCO₂が出るのでは?」「天気で発電量が変わって大丈夫?」と感じたことはありませんか。発電時だけでなく、設備の製造から廃棄までを含めて考えてみましょう。
この記事の目次 11項目
再生可能エネルギーとは?
経済産業省の資料では、再生可能エネルギーは「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」とされ、法律で太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱などの自然界の熱、バイオマスが定められています。[1]ただし、利用量が自然の回復力を上回れば、資源や環境への負担が生じます。太陽光・風力は運転時に燃料を燃やしませんが、バイオマスの燃焼ではCO₂が出ます。
ただし、「再生可能」は環境負荷がゼロという意味ではありません。パネルや風車の製造には金属やガラスなどの資源が必要で、設置に土地が必要な場合もあります。そのため、発電時だけでなく、設備の製造から廃棄までを含めて考える必要があります。
再生可能エネルギーの代表的な5種類
太陽光発電
太陽電池で光を電気に変えます。屋根や工場、空き地などに設置でき、発電中に燃料を燃やさないため、発電設備からの直接のCO₂排出は基本的にありません。一方、夜間は発電できず、曇りや雨の日は発電量が下がります。大規模な設備のために森林を伐採する場合は、土地利用や生態系への影響が課題になります。
風力発電
風で風車を回して発電します。陸上の「陸上風力」と、海上の「洋上風力」があります。風の強さで発電量が変わり、立地によっては鳥類やコウモリ類の衝突、騒音、景観への配慮が必要です。
水力発電
水が高い所から低い所へ流れる力などで発電します。大規模なダムのほか、河川や農業用水路を使う小水力発電もあります。比較的安定した発電が可能な方式もありますが、降水量の影響を受けます。ダムや取水設備は、川の流れ、魚の移動、土砂の運搬などに影響する場合があります。
地熱発電
地下の熱エネルギーで電気をつくります。天候の影響を受けにくく、比較的安定した発電が期待できます。一方、使える場所が地質条件に左右され、温泉資源や自然環境への影響を十分に調べる必要があります。
バイオマス発電
木材、農業残さ、食品廃棄物など、生物に由来する資源で発電します。廃棄物や未利用資源を活用できる場合があります。ただし、燃焼する方式ではCO₂や大気汚染物質が出ます。バイオマスだからといって、自動的にカーボンニュートラル(排出と吸収・除去の差し引きがゼロ)になるわけではありません。原料の生産方法、森林の再生、輸送、加工、土地利用の変化まで含めた評価が必要です。
再生可能エネルギーの3つのメリット
温室効果ガスの排出を減らせる
設備の製造・輸送・建設・運転・廃棄までのライフサイクル全体で見ても、太陽光や風力は化石燃料による発電より排出が少ないと評価されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、太陽光発電の近年のライフサイクル排出量の推定値を、石炭火力や天然ガス火力のおよそ10分の1の水準と整理しています。[2]ただし、発電方式・設置場所・設備の寿命で排出量は変わります。
化石燃料への依存を減らせる
日本は、石油・天然ガス・石炭などの多くを海外から輸入しています。国内で使える再エネを増やすことは、エネルギー源の多様化にもつながります。ただし、設備の製造に海外の資源や部品が必要な場合もあり、調達まで含めた検討が必要です。[3]
地域の資源を活用できる
屋根への太陽光パネルや、地域の水路を使った小水力発電など、地域の資源を生かせます。ただし、利益と負担の分け方や、住民との合意形成が大切です。
再生可能エネルギーにも環境問題はある?
森林や土地利用への影響
太陽光発電などの設置で、森林や草地を大きく改変する場合があります。生き物の生息場所が失われたり、水の流れが変わったりする可能性があり、特に傾斜地では、造成方法や排水、地盤によって土砂流出への配慮が必要です。経済産業省の資料も、傾斜地への設置など安全面の懸念が高まり、住民への説明不足による地域トラブルも起きていると整理しています。[3]
ただし、すべての太陽光発電が森林破壊を起こすわけではありません。既存の建物の屋根や、すでに開発された土地を使う方法もあります。大切なのは、どこに、どのように設置するかです。
生物多様性への影響
環境省は、風力発電施設で、鳥類が羽根(ブレード)に衝突して死亡する事故が起きていると整理しています。このため、環境省は立地を検討する段階で、環境影響評価などで押さえるべき点をまとめた手引きも作成しています。[7]水力発電では河川の連続性や水生生物の生息環境、地熱発電では開発地域の自然環境への配慮が必要です。事前の環境影響評価や適切な立地選び、運転の工夫が重要です。
資源採掘と設備の廃棄
パネル、風車、蓄電池の製造には、金属や鉱物などの資源が必要です。採掘や精製には、エネルギーの使用や土地・水環境への影響が伴う場合があります。また、寿命を迎えた設備の回収・処理・リサイクルも必要です。日本では、使用済み太陽光パネルの排出量が2030年代後半以降、年間最大50万トン程度と大幅に増える見込みで、処理体制や費用の確保が課題です。[8]
2026年5月には太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律が成立し、6月5日に公布されました。制度は見直されているため、具体的な対象や手続きは環境省の最新案内を確認してください。[9]
用語メモ|LCA(ライフサイクルアセスメント)とは
- 製品や技術について、原料の採掘から製造・使用・廃棄まで、全体の環境負荷を評価する方法です
- 発電方式の比較でも、発電時のCO₂だけでなく、製造・建設なども含めて考えます[2]
電気を安定して届けられる?
太陽光は夜に発電できず、風力は風が弱いと発電量が下がります。経済産業省の資料も、再エネは天候で出力が変動するため、需要と供給のバランスをとる対応が必須だと述べています。[3]一方で、使う電気の量も時間帯や季節で変わります。
対策には、蓄電池や揚水発電の活用、送電網の整備、地域間での電気の融通、使う時間の調整、さまざまな発電方式の組み合わせなどがあります。資源エネルギー庁は、地域間の連系線の整備と、蓄電池の整備を対策に挙げています。[3]揚水発電とは、電気に余裕があるときに水を高い場所へくみ上げ、必要なときに流して発電する仕組みです。[4]
⚠ 誤解しやすいポイント
- すべての再エネが不安定なわけではありません。水力や地熱など、比較的安定した出力が期待できる方式もあります
- 蓄電池があればすべて解決するわけではありません。送電網や需要側の工夫も必要です
- 発電技術と電力システムを一緒に考えることが大切です
世界ではどれくらい増えている?
2025年の追加容量|一部推計を含む実績
IEA(国際エネルギー機関)の「Global Energy Review 2026」によると、2025年に世界で追加された設備容量は、太陽光が600GW超(前年比約12%増)、風力が約160GW(約40%増)と、いずれも過去最高でした。[6]ただし、この数値は実績と、全年データが揃っていない地域の推計を組み合わせたものです。[6]
2030年までの見通し|2025年時点の予測
将来については、IEAの「Renewables 2025」が、2025〜2030年に世界の再エネ発電設備容量が約4,600GW増えると予測しており、その約8割を太陽光が占めるとしています。[5]GW(ギガワット)は発電設備の出力の単位です。ここで示した増加量は2025年時点の予測であり、すでに導入された実績ではありません。同じ報告で、再エネの出力が増えることで、出力を抑える措置(出力制御)や電気の価格がマイナスになる現象が起きており、送電網・蓄電・柔軟な発電への投資が急務とも指摘されています。[5]
⚠ 設備容量と発電電力量は違います
- 設備容量(GW):どれくらいの出力で発電できるか
- 発電電力量(kWhなど):実際にどれくらいの電気をつくったか
- 容量が増えても、発電量は天候や稼働状況で変わるため、同じ割合では増えません
日本の再生可能エネルギー政策と課題
2040年度の見通しは実績ではない
2025年に策定された第7次エネルギー基本計画では、再エネは「主力電源として最大限導入する」とされています。電源構成の見通しは、太陽光が2023年度の9.8%から2040年度に23〜29%、風力が1.1%から4〜8%程度、バイオマスが4.1%から5〜6%程度です。[3]
地域との共生と制度への対応
一方、導入に向けた課題として、地域との共生、国民負担の抑制、出力変動への対応、使用済み太陽光パネルへの対応、技術開発(ペロブスカイト太陽電池や洋上風力など)が挙げられています。[3]FIT(固定価格買取制度)・FIP(市場価格に一定の補助を上乗せする制度)では、規模や設置場所などに応じ、認定申請前の説明会や事前周知が求められます。すべての設備で同じ要件になるわけではありません。[10]
日本は地形・気候・人口密度・送電網の条件が地域で違うため、全国どこでも同じ発電方式が最適とは限りません。地域の自然環境や暮らしと調和する形で、技術を選ぶことが重要です。
どう評価すればよい?
温室効果ガスが少なくても、重要な生息地を改変すれば生物多様性に影響する可能性があります。つまり、一つの指標だけで「良い・悪い」は決められません。次の視点を組み合わせて、総合的に評価することが大切です。
費用と実現可能性も、もう一つの重要な視点です。
私たちにできること
電気の使い方を見直す
使っていない照明を消す、省エネ性能の高い製品を選ぶなど、エネルギー消費を減らすことも大切です。
電気がどうつくられているかを知る
電力会社が公表する電源構成などを確認すると、電気の供給源を学べます。ただし、電力メニューの環境価値を比べるときは、再エネの証書やCO₂排出係数などの仕組みにも注意が必要です。
地域の発電事業に関心を持つ
新しい発電設備が計画されたら、環境への影響や、地域への利益・負担に関心を持ちましょう。
メリットと課題の両方を知る
「再エネだから環境にやさしい」「自然を壊すから導入すべきでない」といった単純な判断ではなく、科学的な情報にもとづいて考えることが大切です。再エネを増やしても、化石燃料の利用を減らす努力が不要になるわけではありません。
まとめ|よくある質問(FAQ)
📌 今回のおさらい
- 再生可能エネルギー:太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、繰り返し使えるエネルギー
- メリット:ライフサイクル全体でも排出が少ない場合が多い/エネルギー源の多様化
- 課題:土地利用・生態系、資源採掘、廃棄、出力の変動
- 評価:複数の視点で総合的に。立地と地域との合意が鍵
再生可能エネルギーとは何ですか?
太陽光、風、水、地熱など、自然界で継続的に補充されるエネルギーを利用するものです。
再生可能エネルギーにはどんな種類がありますか?
代表的なものに、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスがあります。
再生可能エネルギーはCO₂をまったく排出しませんか?
いいえ。太陽光や風力は運転時の直接排出が非常に少ない一方、設備の製造や建設などで排出が発生します。バイオマスでは燃焼時にもCO₂が排出されます。
太陽光発電は森林破壊につながりますか?
設置場所によっては森林伐採や土地の改変が必要になり、環境への影響が生じる場合があります。ただし、屋根など既存の人工物を使う方法もあります。
再生可能エネルギーだけで電気を安定供給できますか?
再エネの割合を高めるには、蓄電池、送電網、需要の調整など、電力システム全体の工夫が重要です。実現できるかどうかは、地域や設備の構成によって異なります。
再生可能エネルギーは本当に環境にやさしいのですか?
多くの方式は、化石燃料による発電より温室効果ガスの排出を減らせますが、土地利用や生態系、資源採掘などへの影響もあります。総合的な評価が必要です。
再生可能エネルギーの重要ポイント
- 気候変動対策で重要だが、環境への影響がゼロではない
- 製造から廃棄までのライフサイクル全体で評価する
- 発電量の変動には、電力システム全体での工夫が必要
- どこに、どのように設置するかと、地域との合意が重要
第18弾も、環境問題を身近な言葉で
次回も、環境問題の用語や流れを、わかりやすく整理して解説していきます。
出典・参考文献
出典・制度の確認日:2026年10月23日。実績・推計・予測を区別して記載しています。
定義・評価と日本のエネルギー政策
- 経済産業省 九州経済産業局「再生可能エネルギーについて」 出典資料を読む
- IPCC (2022), Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change(WG III), Chapter 6 出典資料を読む
- 資源エネルギー庁「「エネルギー基本計画」をもっと読み解く③:大幅な拡大をめざす再生可能エネルギー」 出典資料を読む
- 資源エネルギー庁「再エネの主力電源化を実現するために」(2018年) 出典資料を読む
世界の導入実績と将来予測
- IEA (2025), Renewables 2025 出典資料を読む/IEA「Global renewable capacity is set to grow strongly, driven by solar PV」 出典資料を読む
- IEA (2026), Global Energy Review 2026 — Solar PV and Wind 出典資料を読む
自然環境とリサイクル制度
- 環境省「風力発電施設と鳥類」 出典資料を読む
- 経済産業省(2026年4月3日)太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案 排出量の見通しを読む
- 環境省「太陽光パネルリサイクル関連」 法律の成立・公布を確認する
- 資源エネルギー庁「再エネ特措法改正関連情報」 説明会・事前周知の要件を読む