環境問題入門

外来種はなぜ問題になる?生態系への影響と私たちにできること【初心者向け第13弾】

外来種とはどんな生き物?在来種との違いや、アライグマ・ブラックバスなどが生態系に与える影響を初心者向けに解説。侵略的外来種や特定外来生物の違い、私たちにできる対策も紹介します。

公開
読了目安
11 min read
草むらに立つアライグマ。外来種の実例として紹介
アライグマの実写。米国フロリダ州で撮影された写真で、日本の被害現場ではありません。 写真:Cary Bass-Deschênes / CC BY 3.0。WebPへ形式変換。トリミングなし。

環境問題をゼロから学ぶ 第13弾

前回の第12弾では、ヒートアイランド現象を取り上げました。今回は、身近な自然と人間活動の関係を「外来種」から学びます。

外来種とは、人間の活動によって本来の分布域の外へ持ち込まれた生き物です。公園や川にいるシロツメクサも外来由来ですが、すべての外来種が問題を起こすわけではありません。今回は、生態系への影響と人間の暮らしの関係を、科学的な根拠とともに整理します。[1]

アイキャッチ写真:Cary Bass-Deschênes / Wikimedia Commons。CC BY 3.0で利用し、WebPへ形式変換しています。日本で撮影された写真ではありません。

外来種とは?在来種との違い

外来種とは、人間の活動によって、本来の分布域の外へ持ち込まれた生き物のことです。

海外から日本へ持ち込まれた生き物だけでなく、人間の活動で日本国内の別の地域から移された生き物も、外来種になる場合があります。

例えば、北海道にはもともと生息していなかったカブトムシが人間によって持ち込まれた場合、その地域では国内由来の外来種として扱われます。

在来種は本来その地域にいる生物、外来種は人が本来の分布域の外へ持ち込んだ生物。国内由来も含む
図1|外来種と在来種の違い。EcoLogオリジナル図解。環境省などの資料をもとに制作。

一方、もともとその地域に生息している生き物は「在来種」と呼ばれます。

外来種と在来種の違いは、その生き物が本来その地域に存在していたかどうかです。

ただし、外来種だからといって、必ずしも生態系に悪影響を与えるわけではありません。

生物多様性とは、生き物の種類だけでなく、遺伝的な違いや生態系の多様さを含む言葉です。影響がまだ調べられていないことと、影響がないことは同じではありません。

多くの外来種は、新しい環境に定着できなかったり、大きな問題を引き起こさなかったりします。

一方で、一部の外来種は、在来種や生態系に深刻な影響を与えることがあります。

生態系などに悪影響を及ぼす外来種は「侵略的外来種」と呼ばれます。生態系とは、生き物と周囲の環境が関わり合う仕組みです。[1]

同じ種でも、地域が変われば外来種になり得ます。一方、渡り鳥や海流など自然の力による移動は、人が持ち込む外来種とは区別します。国境だけで判断しないことがポイントです。[1]

なぜ外来種が増えているの?

外来種問題の背景には、私たち人間の活動があります。

昔から人間は、食料や資源として利用するために、さまざまな生き物を別の地域へ運んできました。

現在では、国際的な貿易や物流、観光などが発達したことで、生き物が本来の分布域を越えて移動する機会が増えています。

外来種が持ち込まれる経路には、大きく2つの種類があります。

① 意図的に持ち込まれる場合

例えば、ペットや観賞用の植物、農業や漁業に利用する生き物などです。

人間が利用する目的で持ち込んだ生き物が、逃げ出したり、野外へ放されたりすることで、自然環境に定着する場合があります。

② 意図せず持ち込まれる場合

貨物や輸送用の資材、船舶などに生き物が紛れ込み、別の地域へ運ばれることがあります。

船の安定を保つために積む「バラスト水」や、船体に付着した生き物を通じて、水生生物が運ばれることもあります。[7]

このように、外来種問題は、人間社会の発展や経済活動とも深く関係しているのです。[2]

外来種が生態系に与える3つの影響

外来種の中には、もともとその地域に生息していた生き物に大きな影響を与えるものがあります。

代表的な影響を3つ紹介します。

① 在来種を食べてしまう

外来種が新しい環境に定着すると、その地域の生き物を捕食する場合があります。

特に、もともと強い捕食者が少なかった島などでは、外来種による捕食が在来種の個体数減少につながることがあります。

② 餌や生息場所を奪う

外来種と在来種が、同じ餌や生息場所を利用する場合、競争が起こることがあります。

外来種の競争力が強い場合には、在来種が減少する可能性があります。

③ 交雑によって遺伝的な影響を与える

外来種と近縁の在来種が交配することで、雑種が生まれる場合があります。

こうした交雑が進むと、地域固有の遺伝的な特徴が失われる可能性があります。

ただし、すべての外来種がこれらの影響を引き起こすわけではありません。

影響の大きさは、生き物の種類や地域の環境によって異なります。[1][3]

捕食は在来種を食べること、競争は餌やすみかをめぐる関係、交雑は近縁の生物の交配。影響は種と地域で異なる
図2|捕食・競争・交雑の3つの仕組み。EcoLogオリジナル図解。環境省などの資料をもとに制作。

日本で問題になっている外来種

日本でも、さまざまな外来種が生態系や農業などに影響を与えています。

ここでは代表的な3種類を紹介します。

アライグマ

アライグマは北アメリカ原産の哺乳類です。

日本ではペットとして飼育されていた個体が逃げ出したり、放されたりしたことなどを背景に、野外での分布が広がりました。

雑食性で、さまざまな動植物を食べるため、在来生物への影響が懸念されています。

また、農作物への被害も報告されています。[4a]

オオクチバス(ブラックバス)

オオクチバスは北アメリカ原産の魚です。

日本では釣りの対象などとして知られています。

魚類や水生昆虫などを捕食するため、在来の水生生物に影響を与えることがあります。

特に、湖やため池などの生態系では、外来魚による捕食が問題になっています。[4b]

グリーンアノール

木製の柵につかまるグリーンアノール。体色が茶色の個体
グリーンアノールの実写。小笠原の被害現場を撮影したものではありません。体色は緑色から褐色まで変化します。[4c] 写真:MallardTV / Wikimedia Commons / CC0 1.0。横幅を1400pxに縮小しWebPへ形式変換。トリミングなし。

グリーンアノールは、アメリカ南東部などを原産とするトカゲです。

日本では小笠原諸島などに定着しています。

昆虫などを捕食するため、地域固有の昆虫類への影響が問題になっています。

特に島の生態系では、もともと生息する生き物の種類や関係が独特なため、外来種の影響が大きくなることがあります。[4c]

この3種はいずれも特定外来生物に指定されています。種ごとの原産地・侵入経路・影響は、環境省の一覧から参照される国立環境研究所のデータベースでも確認できます。[4][4a][4b][4c]

世界の外来種問題|IPBESの2023年評価

IPBES(生物多様性について世界の研究を評価する政府間の組織)は、2023年の報告で、世界で定着が確認された外来種を37,000種以上、そのうち侵略的外来種を3,500種以上と整理しました。2026年の最新実測値ではなく、報告書が集約した知見です。[2][3]

IPBESの2023年評価では定着した外来種37,000種以上のうち侵略的外来種は3,500種以上。面積比を表さない内数の模式図
図3|世界の外来種と侵略的外来種。EcoLogオリジナル図解。IPBES(2023)の概数を示した模式図で、面積や割合を表すものではありません。[3][8]

生物の侵入による世界の年間経済的費用は、2019年に4,230億米ドルを超えると推計されています。被害に加えて管理などの費用を含むため、全額を単純な「損失」とは呼びません。地域や生物による情報の偏りもあり、数字は全被害を漏れなく数えたものではありません。[3]

外来種はすべて駆除するべき?

ここまで外来種による影響を紹介してきました。

しかし、外来種だからといって、すべての生き物を駆除するべきなのでしょうか。

答えは「いいえ」です。

外来種の中には、生態系に大きな影響を与えないものもいます。

また、農業や私たちの生活を支えている外来由来の生き物も存在します。

重要なのは、外来種という理由だけで判断するのではなく、その生き物がどのような影響を与えているのかを科学的に評価することです。

生態系への影響が大きい場合には、侵入の防止や個体数の管理、必要に応じた防除が行われます。

日本では「外来生物法」によって、生態系や人の生命・身体、農林水産業などに被害を及ぼす、または及ぼすおそれのある外来生物のうち、指定されたものを「特定外来生物」として規制しています。[5]

「侵略的外来種」は影響に着目した生態学的な概念で、「特定外来生物」は日本の法律に基づく指定です。外来生物法は国外由来の生物を対象としており、国内由来の外来種も含む生態学上の用語とは対象が異なります。[1][5]

両者は完全に同じ意味ではありません。

外来種問題への対策では、科学的な根拠だけでなく、地域社会への影響や動物福祉なども考慮しながら、適切な管理方法を検討することが重要です。

2026年10月に確認した環境省の説明では、特定外来生物の飼育・栽培・保管・運搬、輸入や野外への放出などは原則禁止です。ただし、許可や一部規制の適用除外があるため、個別の種と行為を公式情報で確認します。「見つけたら持ち帰る」という対応は避けてください。[5]

私たちにできることは?

外来種問題を防ぐために、私たち一人ひとりができることもあります。

環境省は、外来種による被害を予防するために、「外来種被害予防三原則」を示しています。[6]

入れない、捨てない、拡げない。人間による新たな導入や放出、別地域への拡散を防ぐ
図4|外来種被害予防三原則。EcoLogオリジナル図解。環境省などの資料をもとに制作。

① 入れない

生態系に悪影響を及ぼすおそれのある外来種を、むやみに自然分布域の外へ持ち込まないことです。

② 捨てない

飼育している生き物や栽培している植物を、自然環境に放したり捨てたりしないことです。

③ 拡げない

すでに野外に存在する外来種を、別の地域へ移動させないことです。

例えば、ペットを最後まで責任を持って飼育することや、釣った魚を別の川や池へ放さないことなどが挙げられます。

また、旅行や野外活動の際に、靴や道具などに植物の種子が付着していないか確認することも、意図しない移動を防ぐうえで役立ちます。

身近な行動を見直すことが、地域の生態系を守ることにつながるのです。

まとめ|外来種を悪者にせず、影響を理解する

外来種の問題は、生き物の善悪ではなく、移動先の環境や在来種との関係から考えることが大切です。捕食・競争・交雑などの影響を調べ、被害の程度に応じて管理します。身近な実践は「入れない・捨てない・拡げない」。外来種を見つけても独断で捕獲・移動せず、自治体や専門機関へ相談しましょう。[1][6]

出典・参考文献

資料確認日:2026年10月17日。本文の角括弧番号は以下に対応します。

よくある質問

外来種とは何ですか?
人間の活動によって、本来の分布域の外へ持ち込まれた生き物です。自然の力による移動とは区別します。[1]
外来種と在来種の違いは何ですか?
本来その地域に生息・生育するのが在来種で、人が本来の分布域の外へ持ち込んだのが外来種です。日本国内の移動でも外来種になる場合があります。[1]
外来種はすべて悪い生き物ですか?
いいえ。すべてが悪影響を及ぼすわけではありません。どの地域で、どのような影響があるかを調べて判断します。[1]
侵略的外来種と特定外来生物の違いは?
前者は影響に着目した概念、後者は外来生物法に基づく指定です。完全に同じ意味ではありません。[1][5]
外来種問題を防ぐには?
「入れない・捨てない・拡げない」を実践します。野外の生物を自己判断で捕獲したり別の場所へ移したりせず、自治体や専門機関に相談しましょう。[6]

シリーズの関連記事